杭州市の新たなイノベーション推進施策2025年02月11日 15:28

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【概要】

 中国の東部に位置する技術都市である杭州市は、電子商取引大手のアリババや新興AI企業のDeepSeekを擁するイノベーション拠点としての地位をさらに向上させるため、一連の新たな施策を発表した。

 杭州市科学技術局の責任者であるLou Xiuhua氏は記者会見において、これらの施策は高度なイノベーションプラットフォームの強化、技術移転および応用の促進、企業を技術革新の主導的主体として強化することを目的としていると述べた。

 この施策の一環として、「パートナーシップ計画」が導入される。この計画では、技術革新プラットフォーム、大学、企業、産業チェーン間の協力を促進することが奨励される。

 さらに、杭州市は、大規模モデルや計算能力インフラなどの基盤プロジェクトの建設を加速させる方針である。これに伴い、計算能力バウチャーの割当も拡大される予定であるとLou氏は述べた。

 計算能力バウチャーは、中小企業(SME)が低コストでより多くの計算リソースにアクセスできるようにするための政府の補助制度であり、AI技術の革新的な応用やデジタル変革の推進を目的としている。

 加えて、杭州市は「AI+」イニシアチブを発足し、AIの産業横断的な統合および応用を促進する。また、技術成果の応用に関する改革を導入し、大学や研究機関が中小企業に対し、「先に使用し、後で支払う」モデルの下で技術をライセンス供与することを奨励する。

 浙江省の省都である杭州市は、インターネットおよび技術産業において重要な拠点へと発展しており、電子商取引、AI、デジタル変革の分野で進展を牽引している。

【詳細】

 杭州市は、中国東部に位置する浙江省の省都であり、同国におけるインターネットおよびテクノロジー産業の主要拠点の一つである。特に、電子商取引大手のアリババ(Alibaba)や、人工知能(AI)分野で急成長を遂げるDeepSeekをはじめとする多くのハイテク企業が拠点を構えており、イノベーションの促進に向けた政策が積極的に推進されている。今回発表された一連の施策は、杭州市をさらに高度な技術革新の中心地へと発展させるための取り組みである。

 杭州市の新たなイノベーション推進施策の概要

 杭州市科学技術局の責任者であるLou Xiuhua氏によれば、新たな施策の柱は以下の3点である。

 1.高度なイノベーションプラットフォームの強化
 2.技術移転および応用の促進
 3.企業を技術革新の主導的主体として強化

 これらの施策により、杭州市内の研究機関、企業、大学などの技術革新能力を統合し、技術の実用化を加速させることが目的とされている。

 1. 高度なイノベーションプラットフォームの強化

 杭州市は、既存の技術革新プラットフォームを強化するとともに、新たな研究開発(R&D)拠点の設立を支援する方針である。特に、大規模な人工知能(AI)モデルやスーパーコンピューティング施設などの基盤技術の整備が進められる。

 杭州市は近年、中国国内においてAI分野での研究・応用が活発な都市の一つとなっており、政府はこれをさらに推進するための大規模な計画を策定している。

 この計画の一環として、大規模言語モデル(LLM)や画像認識技術、機械学習プラットフォームなどの開発を加速するための新たな施設の建設が進められる。また、AI技術に関するデータセンターや高性能コンピューティング(HPC)インフラの拡張も計画されている。

 2. 技術移転および応用の促進

 杭州市は、新技術の実用化を促進するため、大学・研究機関と企業の連携を強化する施策を導入する。これにより、大学で開発された技術や特許が企業に速やかに移転され、商業化されることが期待される。

 今回の施策の中で特に注目されるのが、「先に使用し、後で支払う(use first, pay later)」モデルの導入である。このモデルでは、中小企業(SME)が大学や研究機関の技術を活用し、事業化に成功した場合にのみライセンス料を支払う仕組みとなる。これにより、技術活用のハードルが下がり、より多くの企業が研究成果を活用できるようになる。

 さらに、杭州市政府は企業向けの「技術バンク(Technology Bank)」を設立し、研究機関の知的財産(IP)や特許技術のデータベースを整備する。このデータベースを通じて、企業は必要な技術を効率的に検索し、研究機関と直接契約できるようになる。

 3. 企業を技術革新の主導的主体として強化

 杭州市は、企業を技術革新の中心的存在として育成するため、資金支援やインフラ整備を強化する。特に、以下のような施策が含まれる。

 (1)計算能力バウチャーの拡大

 ・政府は、中小企業(SME)が高度な計算能力を必要とするAI技術の開発やデジタル変革を推進できるよう、「計算能力バウチャー(Computing Power Vouchers)」の支給を拡大する。
 ・計算能力バウチャーは、企業がクラウドコンピューティングリソースやスーパーコンピュータの利用費用を低減するための補助制度であり、杭州市内の技術系スタートアップにとって重要な支援策となる。

(2)「AI+」イニシアチブの発足

 ・杭州市は、人工知能技術の産業横断的な応用を促進するため、「AI+」プロジェクトを立ち上げる。このプロジェクトでは、AI技術をさまざまな産業分野に統合することを目的としており、特に以下の分野への適用が奨励される。

  ⇨ 製造業(スマートファクトリー・自動化)
  ⇨ 医療・ヘルスケア(AI診断・創薬支援)
  ⇨ 金融(フィンテック・リスク管理)
  ⇨ 小売・電子商取引(レコメンドシステム・需要予測)

 ・この施策の一環として、杭州市政府はAI分野のスタートアップ企業向けの資金支援や、研究機関との共同プロジェクトの推進を行う予定である。

 杭州市のテクノロジー産業の現状と今後の展望

 杭州市はこれまでも電子商取引(Eコマース)やフィンテック、デジタルサービス産業の中心地として発展してきた。アリババをはじめとする大手IT企業の存在が、技術革新の促進に寄与しており、AIやデータサイエンスの分野でも多くの新興企業が成長を遂げている。

 今回の施策により、杭州市はさらに高度なイノベーション拠点としての地位を強化し、AI・デジタル技術の実用化を加速させる都市としての発展を目指している。政府の支援を受けたスタートアップ企業や研究機関が協力し、産業のデジタル変革がさらに進むことで、中国国内だけでなく国際的な技術競争力の向上にも寄与することが期待される。

【要点】

 杭州市の新たなイノベーション推進施策(概要)

 1. 施策の目的

 ・杭州市を高度な技術革新の中心地へ発展させる
 ・企業、大学、研究機関の連携を強化し、技術の実用化を加速
 ・AIやデジタル技術を活用した産業のデジタル変革を推進

 2. 主要施策

 ① 高度なイノベーションプラットフォームの強化

 ・大規模なAIモデル、スーパーコンピューティング施設などの基盤技術を整備
 ・研究開発(R&D)拠点の設立支援
 ・AI・データサイエンス分野の研究環境を拡充

 ② 技術移転および応用の促進

 ・大学・研究機関と企業の連携強化
 ・「先に使用し、後で支払う(use first, pay later)」 モデルの導入

  ⇨ 中小企業(SME)が大学の技術を活用し、事業化成功後にライセンス料を支払う制度

 ・「技術バンク(Technology Bank)」の設立

  ⇨ 研究機関の知的財産(IP)や特許技術のデータベースを整備

 ③ 企業を技術革新の主導的主体として強化

 ・計算能力バウチャーの拡大

  ⇨ SMEがクラウドコンピューティングやスーパーコンピュータを低コストで利用可能に

 ・「AI+」イニシアチブの発足
  
  ⇨ AI技術の産業横断的な応用を推進
  ⇨ 重点分野

  * 製造業(スマートファクトリー・自動化)
  * 医療・ヘルスケア(AI診断・創薬支援)
  * 金融(フィンテック・リスク管理)
  * 小売・電子商取引(レコメンドシステム・需要予測)

 3. 杭州市のテクノロジー産業の現状と今後の展望

 ・アリババなどの大手IT企業が技術革新を牽引
 ・AI・デジタル技術分野のスタートアップ企業が急成長
 ・政府の支援を受け、研究機関と企業が協力し産業のデジタル変革を推進
 ・中国国内外における技術競争力の向上が期待される

【引用・参照・底本】

China's tech hub unveils measures to boost innovation GT 2025.02.11
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328214.shtml

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