トランスジェンダー兵士に対する禁止令が憲法に違反2025年03月19日 10:45

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【概要】
 
 2025年3月19日、アメリカの連邦判事は、ドナルド・トランプ大統領の指示に基づく軍隊におけるトランスジェンダーの兵士の禁令の施行を差し止める判断を下した。この判決は、トランプ大統領の広範な政策に対する一連の法的な後退の一環である。ワシントンD.C.のアメリカ合衆国地区判事アナ・レイエスは、トランプ大統領の命令がトランスジェンダー兵士を軍務から排除することは憲法に基づく平等保護の権利に違反する可能性が高いと判断した。

 レイエス判事は、トランプ大統領の命令が軍隊の準備態勢に害を与えるとされ、性自認が軍人の名誉、真実性、規律を保持する上で矛盾しているとする主張に反対した。判事は、軍の任務を果たす能力に何の影響も与えない特徴に基づいて、トランスジェンダーの兵士を軍から排除することは不当であると述べた。

 トランプ大統領は2025年1月27日にこの命令を署名し、その内容はトランスジェンダー兵士が持つ性自認が軍務に対する誠実で規律ある生活と対立し、軍の準備態勢に悪影響を与えるとするものであった。この命令に応じて、ペイト・ヘグセス国防長官は、性別不一致(性同一性障害)のある者を軍務に適格としない政策を発表した。

 原告側は、トランスジェンダー兵士や軍に加わりたいと考えるトランスジェンダーの6人とその支援者が訴訟を起こした。原告側の弁護士は、トランプ大統領の命令が憲法上の平等保護権を侵害していると主張している。一方、政府側は軍の指導者が兵士をどのように配置し、任務を与えるかに関して広範な裁量を持っていると述べている。

 判事は、裁判所が行使する判断に対して過度な行使があってはならないとしながらも、政府の命令が不当であるとする判断を下した。また、軍隊で働くすべての兵士に対し、感謝と尊敬が与えられるべきであると述べている。

 この判決は、トランプ大統領の行政命令に反対する一連の裁判結果の一部であり、これにはトランスジェンダーの若者への性別確認ケア支援停止命令や、トランスジェンダー女性の刑務所への移送を禁止する命令に対する判決も含まれている。

【詳細】 
 
 2025年3月19日、アメリカ合衆国ワシントンD.C.の連邦地区判事アナ・レイエスは、ドナルド・トランプ大統領が署名した軍隊におけるトランスジェンダーの兵士の禁止令を差し止める仮処分命令を出した。この判決は、トランプ大統領の政策に対する一連の法的な後退の一環であり、トランプ政権によるトランスジェンダーの権利に対する制限の試みが引き起こした法的闘争の最新の展開である。

 背景と訴訟

 2017年、トランプ大統領はツイートを通じて、トランスジェンダーの人々を軍に従事させることを禁じる意向を示し、その後2018年には正式に大統領令を発出した。この命令は、トランスジェンダーの兵士が軍務に従事することを制限し、特に性別不一致(性同一性障害)と診断された人物や、性別確認治療を受けている者は軍に入隊できないという内容であった。

 その後、トランプ政権は国防総省に対し、性同一性障害の診断を受けた人物を軍務に不適格とする新たな方針を発表し、この方針に従って性同一性障害がある者を軍に配置しないとした。これに反発するトランスジェンダーの兵士や新規応募者は、平等保護を侵害するものであるとして、訴訟を起こした。

 レイエス判事の判断

 アメリカ合衆国地区判事アナ・レイエスは、トランプ大統領の命令がトランスジェンダー兵士の憲法上の平等保護権を侵害する可能性が高いとし、命令の施行を差し止める仮処分を出した。彼女は、トランスジェンダーの兵士が軍に従事する権利を侵害する命令は憲法に反すると判断した。特に、トランスジェンダーの兵士が示す能力や貢献に影響を与えることなく、その性自認を理由に軍務を制限することは不当であるとした。

 レイエス判事は、司法の役割として、他の政府機関が行使する権限に対してチェック・アンド・バランスを行うことが必要であり、そのためにトランプ大統領の命令を差し止めることが適切であると説明した。さらに、軍務に従事するすべての兵士には感謝と尊敬が与えられるべきであり、トランスジェンダー兵士も例外ではないと強調した。

 判決の重要性と影響

 この判決は、トランプ政権下で発表された一連の政策変更の一部であり、トランスジェンダーの権利に関する重要な法的課題に対する反響を示している。例えば、トランプ政権は他にも、トランスジェンダーの若者に対する性別確認ケアの提供を制限する命令を出しており、これに対してはシアトルやボルチモアの連邦裁判所が停止命令を出した。また、トランスジェンダーの女性が男性の刑務所に移送されることを禁止する命令も停止された。これらの判決は、トランプ政権の政策がトランスジェンダーの人々に対する差別的な影響を与える可能性があることを示している。

 兵士たちの声

 原告の一人であるニコラス・タルボット少尉(アメリカ陸軍予備役)は、トランスジェンダーであることを理由に軍から排除されることを恐れていたが、この判決によって安心したと述べた。彼は、「これが私の夢の仕事であり、やっとそれを手に入れた。今はもうそれを失うことを恐れずにいられる」と語った。また、タルボットは、軍の仲間たちが彼が軍に残ることを喜んでくれるだろうと期待しているとも話した。

 トランプ大統領の政策に対する反発

 トランプ大統領はその任期中に、同性婚やLGBTQ+の権利に対して反対する政策を多数発表し、これに対しては国内外から反発があった。特に、軍隊におけるトランスジェンダー兵士の制限を巡る議論は、アメリカのLGBTQ+コミュニティにとって大きな争点であった。判決が示すように、司法がトランプ政権の一部政策を差し止めることで、トランスジェンダーの兵士に対する法的保護が維持されることが確認された。

 今後の展開

 この判決には仮処分命令が含まれており、トランプ政権はこの決定に対して控訴することができる。控訴審での最終的な決定が下されるまで、トランスジェンダー兵士に対する命令の施行は差し止められることとなる。このため、今後の法的な闘争や政府の対応に注目が集まっている。

 総じて、この判決は、トランスジェンダーの権利に関する重要な法的判断であり、トランスジェンダー兵士が持つ平等な権利を守るための一歩となる可能性がある。

【要点】

 ・判決の日付と裁判所: 2025年3月19日、アメリカ合衆国ワシントンD.C.の連邦地区判事アナ・レイエスが、トランプ大統領のトランスジェンダー兵士の禁止令を差し止める仮処分命令を出した。

 ・背景: 2017年、トランプ大統領はツイートでトランスジェンダー兵士を軍から排除する意向を示し、2018年に公式に大統領令を発出。これにより、性同一性障害を持つ人物や性別確認治療を受けた者は軍に入隊できなくなった。

 ・訴訟の理由: トランスジェンダー兵士や新規応募者は、平等保護を侵害するものであるとして訴訟を起こした。

 ・判決の内容: アナ・レイエス判事は、トランスジェンダー兵士に対する禁止令が憲法に違反するとして、命令の施行を差し止める仮処分を決定。

 ・判決の根拠: トランスジェンダー兵士の能力や貢献に影響を与えることなく、性自認を理由に軍務を制限することは不当であると判断。

 ・司法の役割: レイエス判事は、政府機関に対するチェック・アンド・バランスが重要であると述べ、司法が政府の権限を制限する役割を果たすことを強調。

 ・兵士の声: 訴訟の原告であるニコラス・タルボット少尉は、判決を歓迎し、安心して軍に従事できるようになったと語った。

 ・トランプ政権の反発: トランプ大統領の政権はLGBTQ+の権利に対して反対する政策を数多く発表し、これに対して国内外から反発があった。

 ・今後の展開: この判決に対して、トランプ政権が控訴する可能性があり、最終的な決定が下されるまで命令の施行は差し止められる。

 ・判決の意義: トランスジェンダー兵士の平等な権利を守るための重要な法的判断となる可能性があり、今後の法的闘争や政府の対応に注目が集まる。

【引用・参照・底本】

Federal judge blocks Trump administration from banning transgender people from military service STARS & STRIPES 2025.03.19
https://www.stripes.com/theaters/us/2025-03-18/federal-judge-blocks-trump-transgender-troop-ban-17189524.html

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